スズメバチたっちゃんとミツバチゆっち
スズメバチたっちゃんはいじめっ子でした。そのお尻にある凶暴にとがった針で出会うものを片っ端から刺しては笑っていました。
あるときスズメバチたっちゃんはミツバチゆっちに出会いました。スズメバチたっちゃんはいつものようにその針でミツバチゆっちを刺そうとしました。ミツバチゆっちは言いました。
「いじわるするのはやめてっ」
スズメバチたっちゃんは言いました。
「やーい!弱虫め!俺のこの強くてかっこいい針に恐れをなしたか!」
するとミツバチゆっちはこう言うのです。
「僕はこの針でだれかを刺したらしんでしまうんだ。君の針は何度だってだれかを刺せるけれど僕の針は一生に一度しか使えない。だから僕はじぶんのためにはこの針は使わないんだよ。」
スズメバチたっちゃんは黙って話を聞いていました。ミツバチゆっちは続けます。
「君はその針をじぶんの力の誇示に使う。だけれど僕はいつかこの針を命をかけてだいじなだれかのために使うんだよ。君は強くもかっこよくもないんだ!」
ミツバチゆっちはそう叫ぶとぶーーんと飛んでいってしまいました。スズメバチたっちゃんは呆然とその場に立ち尽くしてしまいました。
そのときです。スズメバチたっちゃんが気を緩めた瞬間に人間が襲いかかってきました。
「悪いハチを退治してやる!」
人間の攻撃はスズメバチたっちゃんの羽をかすめました。スズメバチたっちゃんはその場にぽとりと落ちてしまいました。
「とどめを刺してやる」
人間がスズメバチたっちゃんを踏みつけようと足をあげたそのとき、
「いててて!」
人間は首をおさえてよろめきました。スズメバチたっちゃんが見上げた先には人間をその針で刺したミツバチゆっちがいました。
スズメバチたっちゃんはミツバチゆっちに向かって叫びました。
「どうして俺のために!」
「それは、僕と君がともだちだからさ…」
「でもおまえは一度針を刺したらしんでしまうって言ったじゃないか!」
「だいじな君のためだ…後悔はしないよ…」
「ミツバチゆっちーーーー!」
ミツバチゆっちはしんでしまいました。
スズメバチたっちゃんは泣きました。たくさん泣きました。そしてその日を境にいじわるをやめてその強くてかっこいい針をじぶんのためではなくみんなを守るために使うようになりました。
おしまい。
ていう絵本をいつか子どもができたときに読んであげたい。ていう妄想。